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リスク小さく
――スケルトン定借、いわゆる『つくば方式』の特徴からうかがいます。
「百年耐久のスケルトンマンションと、供給価格を引き下げる定期借地権を組み合わせたものです。五十年後に建物を取り壊して土地を地主に返還するのが通常の定借マンションだが、それでは百年住宅の概念と矛盾するので、地主が入居者からスケルトンと呼ばれる骨格部分を受け継ぐことでそれを解消する」
――地主がスケルトンを買い取る?
「そうです。それによって長持ちする住宅を安く供給できる社会的効果があるし、入居者にすれば通算して六十年間持ち家として居住できる。特に、間取りや内装といったインフィルを環境変化に併せて自由に交換する(つくり変える)ことが可能な分、それだけスケルトンを長期にわたって使用する、つまり長持ちさせることができる」
「スケルトン各住戸の面積は決まっているが、バルコニー側の外壁を変更可能にすることで、サンルームを設けるなどバルコニーにも増築できる構法がある。自由設計できるという点はやはり大きな魅力で、定期借地権を使うことでこうした住宅に低コストで住める。ただ、その分通常の定借マンションよりは若干割高になるし、六十年間以上の耐久性が必要なので躯体全体の建築コストも五%前後アップします」
――地主のメリットは?
「現在の土地活用・経営は、入居者確保に不確定要素のある賃貸住宅経営が一般的だが、景気後退や今後の少子化などで経営リスクは大きくなる傾向にある。このためそれに変わる経営手法がなければ土地活用ができにくくなる。ある程度持ち家感覚で住めるうえ、一度入居すれば空室になりにくい定借方式は、スケルトン定借を含め入居者需要が見込みやすい面がある」
「スケルトン定借と通常の定借とでは大きな違いが二点ある。第一は、地主が三十年後に建物を買い取るかどうか選択できる点。建物を買い取ってその時点から賃貸住宅として経営してもいいし、無償で返還される六十年後まで待って、そこから賃貸経営してもいい。そうした特約を契約当初に盛り込むわけです」
――その場合、三十年後の買い取り価格はどうなりますか。
「基本的にはスケルトン部分にかかった建築費の四割。一戸当たり百u程度のスケルトンなら二千万円程度なので買い取り価格は八百万円前後。四割というのは、耐用年数を六十年と設定した場合の減価償却をはじいた割合です。」
修繕費を増減
――第二の相違点は?
「入居者による維持管理が徹底されるという点です。通常の定借のように建物を取り壊して土地を返還する場合、入居者が維持管理をしなくなってついにはスラム化の危険性がある。四十年もすれば、どうせ取り壊すのだからと修繕費用を払わない人が出てきたり、その結果建物が荒れるので退去したりする人も出てくるわけです。スケルトン定借ではこれを回避する」
――その仕組みは?
「マンションは一般的に三十―三十五年目にかけてエレベーターや給排水管などの全面交換といった非常に大規模な修繕を行う必要がある。この費用が一戸当たり約六百万円と高い。通常は修繕積立金などで対処するが、これは外壁の塗り替えや防水工事など十二、三年目に行う大規模修繕を想定したもので、設備交換などの超大規模修繕を乗り切るには住民の合意形成で積立金を引き上げるか、例えば六百万円を別に支払う必要がある。分譲マンションではこれが乗り切れず、だいたいこの時点で建て替えとなるが、五分の四の決議が必要だし、その時点の容積率問題も出てくる」
「その点つくば方式では、三十年目の地主の買い取り価格に、建物の修繕状態を加味して増減する。例えば二十八年目にこうした大規模修繕を行えば、その費用の二分の一を買い取り価格に加算する。一方で修繕をしなかった場合には、相当額全額を減額する」
「入居後一部の入居者が修繕費を払わないケースも想定されるため、当初の借地契約時に全入居者が地主と個別に建物処理に付いて合意・契約する仕組みにしている。このため住民の合意形成も特に必要としません。つまりストック形成のためにも維持管理にかかる費用を入居者がきちんと負担し、建物の修理を円滑に進めるという点にスケルトン定借の目的がある」
――研究はいつから着手されましたか。
「十年ほど前からです。高齢化社会を控え、お年寄りが都心部にも居住できるのにふさわしい住宅をというのが元々のテーマ。ところが都心部では価格も高いし、マンション自体の質も高齢居住に耐え得るものではない。それなら@間取りも自由で車イス対応も簡単にできる構造A低価格のための期限付きの権利―をという条件を設定した。」
――この時点ですでにスケルトンという構想はあった?
「ありました。当時はまだ定期借地権がなかったので、スケルトン自体の三十年間の利用権を一括購入する『スケルトン利用権』という形でした」
――その場合は、スケルトンの所有者は別になる。
「そうです。当初は公社・公団などの公的セクターを想定していた。ただ、当時は利用権という法律がなかったうえ、建設費負担の問題もネックとなりました。価格を安くするには建設費の半分を三十年間誰かが肩代わりしなければならない。長期に及ぶので民間ではできにくいし、債券を発行して公的セクターが建設することも考えたが、やはりすぐには実現しにくい」
――そこに定期借地権が出てきた。
「総です。定借の譲渡特約、つまり建物買い取りのスキーム、これは使えるのではないかということになり、最終的につくば方式ができた。これまで、つくば市内で二棟が完成し、世田谷区で今週に一棟(松原アパートメント)が完成。現在三ヵ所(目白、世田谷経堂、横浜鶴見)で建設中で、前橋市では十五戸の入居者(コーポラティブ参加者)を募集中です」
「いずれも面積が八百―千uの中規模土地という点で共通している。従来の土地経営手法では地主単独での事業化には中途半端な規模で、その面からもこうした土地を抱える地主にとっては選択の幅が広がるといえます。利回りも基本的には通常の定借と同様なうえ、コーポラティブをとるのでリスクは少なくなる」
――一方で、優良ストックの形成にも役立つ。
「社会的観点からはそうです。特に街並みに配慮した住宅を建てやすく、まちづくりに貢献することになるでしょう。中心商店街の疲弊が現在問題になっていますが、こうした地区への人口呼び戻しによる活性化の具体的手法となり得ます。一般的に商店街は容積率が大きいので四百u程度の土地であれば、スケルトン定借を導入できる」
――地価下落に歯止めが掛からない状況では、地主、入居者双方のメリットが薄まるのでは?
「定借だけとしての面から捉えると価格競争の性格がどうしても強まる。しかしつくば方式は、内部を自由設計できるし、六十年間の維持管理システムで分譲マンションより安心して住める。コーポラティブの組み合わせで経営リスクも回避できる。こうした価格以外の価値がクローズアップしてくる。特に地主にとって、地価下落でほかの経営手法に限りが出てくるので、余計につくば方式が大きな選択肢となり得ます」
普及へ”裸売り”
――今後の推進に当たっての問題点は?
「二つあります。第一はつくば方式を実際に進めるにはかなりのノウハウが必要だということです。特にスケルトンという建築の仕組みと定借の仕組みの両方をある程度以上理解する必要がある」
「このために人材研修が重要。これについては七月六日『スケルトン定借(つくば方式)普及センター』が発足し、一応のメドがつきました」
――第二は?
「建築面の課題です。大きく普及させるにはスケルトン売り=裸売りができないといけない。つまり、スケルトンを建売するつくば方式です。つくば方式にコーポラティブを採用する理由は、事業リスクを回避するだけでなく、間取りを自由設計できるというスケルトンのメリットをはっきり打ち出すということもある。しかしコーポラティブは手間がかかる。建売で分譲し、かつ入居者が間取りを発注する。これには、建築基準法の完了検査の問題上から同法の改正が必要になる」
――『骨組み』は完了ではない。
「そうです。やはり建築完了とするのは無理があるので、現在、仮使用承認制度の活用を考えています。例えば、マンションでは半分の入居者が決まり、残りはがらんどうでもいい。仮使用承認を得ることで、半分は入居、残りは入居者が決まり次第中身を発注する。つくば方式だけでなく、一般分譲マンションへの適用も有効になります。」
スケルトン定借で一気に解消
投資はほぼゼロ 地主
入居者
低負担でニーズ実現
スケルトン定借は、定期借地権の一種である建物譲渡特約付き借地権を活用、百年間の長期耐用が可能で住戸内部(インフィル)を入居者が自由設計できるスケルトン(骨組み)方式による集合住宅を建設し、定借のメリットを生かして住宅を低価格で供給する一方、良質なストック形成を促進する手法として開発された。
最大の特徴は、まず全期間を六十年としたうえで、建物譲渡特約に基づいて借地期間を三十年とし、借地期間終了時に地主が建物を買い取り残り期間を借家経営するか、そのまま借地として経営するか選択できるようにした点。
入居者は住戸を購入してから当初三十年間は通常の一般定期借地権と同様、購入ローンのほかに地主への地代を支払うが、三十年後に地主が建物を買い取ると借家契約に切り替わり、入居者は残りの期間、地主(建物オーナー)に家賃を支払う。
一般の定借と異なるのは借地期間満了時の土地返還に伴う建物取り壊しを前提としないので、保証金を必要とせず、割高なスケルトン住宅の建設費(インフィル部分の工事費含む)を拠出しても低負担で満足できる住宅を取得できるうえ、三十年後以降は、地主の建物買い取り価格と入居者家賃を毎月相殺する「家賃相殺契約」を締結するため、借家に移行しても結果的に月々の賃料は通常の賃貸マンションより割安になる。住宅ローンもその時点で終了するので実際の入居者負担は大きく軽減されることになる。
地主にとっては、建物建設資金など初期負担が不要であるうえ、全入居者が集まってから事業化するコーポラティブ方式を取るため空室懸念といった経営リスクがなくなる。三十年後の建物買い取りを選択した場合も、家賃相殺契約によって実際には買い取り費用は発生せず、前期間にわたって持ち出しゼロで土地経営ができる。六十年後は更地化するかそのまま賃貸経営するか地主が選択する。
11月7日梅田で入居者セミナー
住宅金融公庫大阪支店は十一月七日、大阪梅田の阪急電鉄本社ビル一階「エコルテホール」で、スケルトン定借に関する入居者向けの公開セミナーを開く。
スケルトン定借の開発者である建設省建築研究所の小林秀樹氏が同方式の概要や仕組み、入居者メリットなどについて解説。放送大学教授の本間博文氏が「入居者が語るスケルトン定借の魅力」について語るほか、関西で現在進行中の具体事業五件の紹介や、公庫大阪支店の竹井隆人氏がスケルトン住宅取得のための融資支援などについてわかりやすく解説する。
対象は一般ユーザーで、参加費は無料、定員は三百人。公庫大阪支店企画広報課(大阪市中央区南本町四―五―二〇、FAX06−282−9271)までFAXか郵送で申し込む。 |